その後、彼女らが見た夢は。



白がぼやく。
「ねぇ、すごく嫌な夢を見たんだけど」
「どんな?」
黒は興味身心に目を輝かせるが、白は心底つまらなさそうな顔をした。
「路地裏でね。私と黒ちゃんが離れ離れだったの」
「うん」
「それなのに私は黒ちゃんを捜しに行かずに、座り込んでただけなのよ」
「……」
「挙句の果てには自分で自分の左目を抉り取ったの」
「そうなんだ」
「最後に私は死んだんだけど。黒ちゃんも死んだのかしら?」
「…」
「どうしたの? さっきから黙り込んで」
「えっ? あ、あの…白ちゃん、夢じゃなくてもそういうことしてるし…」
「あら、そうかしら」
「そうだよう」
「それじゃ、今日はずっと一緒にいましょうね」
「いつもいっしょだもん」
「わがままねぇ。何? もっとディープなのがお好みかしら」
「ええっ」
「ふふ。冗談よ、冗談」
「冗談に聞こえないからこわいんだよう」
「そうねぇ。でも本当におかしな夢だったわ」
「ってあれ? 私も同じ夢を見たような気がするよ」
「そうなの?」
「うん。路地裏で、白ちゃんがいなくって、見つかった時には死んでた」
「珍しいこともあるのね」
「悪夢? ってしあわせのまえぶれなんだよね!」
「それは迷信よきっと。悪夢は悪夢」
「えー」
「夢は必ず覚めるの。良い夢も、悪い夢も。悪い夢は嫌でしょう。でも、良い夢がいつか必ず覚めてしまうのだって嫌でしょう? そう考えると、夢って全部悪夢なのよね」
「なるほどー」
「一番幸せなのは、大好きな人が傍に居ること。そうでしょう?」
「そうだね。白ちゃん、大好きっ」
「ふふ、ありがと。私も黒ちゃんのこと、大好きよ」
「でもいじわるするのはやめてね」
「それは無理な相談ねぇ」


路地裏の眼球が腐りだした頃のお話。