「ねぇ黒ちゃん」
声を掛けると、黒が振り向いた。
「これあげる」
白が差し出したのは、一粒の飴玉。
半透明のそれを、黒は嬉しそうに手に取った。
「ありがとう」
早速と、黒は飴玉を口の中へと放り込む。
微笑んで美味しそうに飴玉を舐める黒を、白も微笑んで見ていた。
雨はまだ降っている。

それから数分経って、黒が舐める飴が小さくなった頃。
急に黒が口を押さえた。
かと思うと、不快な音を立てながら、大量の血を吐き出した。
「おえっ…おぇえっ」
指の隙間を縫って、真赤な血が木の床に広がっていく。
血溜まりが白の真白な足を濡らすまで広がった頃に、黒の体が崩れ落ちた。
真赤な手に、小さな飴玉が一つだけ。
「…毒でも入ってたのかしらね」
することもないので、白も椅子に腰掛けて瞳を閉じた。



手の上の飴玉が乾いて固まっても、まだ雨は降り続いていた。