―雨が舐める飴。









気温は氷点下ではないかというほど。
冷たすぎるほどの雨が、容赦なくコンクリートを叩きつける。
何処かの街で、片腕の少女が傘を差す。
少女はもう片方の手を待ちわびて、しかしもう諦めた。
たとえば私に生えなかったその腕が、誰かの腕となるのかもしれない。たとえば私に生えなかったその腕が、

誰かの喉を絞め殺すのかもしれない。
そう考えると、少女はもう死んでもいいかなと思った。
自分が持ち得なかった腕を求めて生きてきただけ。でも、もうそれもどうでもいい。
片腕の少女は傘を捨てた。雨は容赦なく少女の体を濡らしていく。
少女の体は冷え、呼吸音も何処かへ消えていく。
ただ、雨の弾ける音だけが、少女に聞こえた立体響音。






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