―ぼーっ。








黒は、自分でも思っていた以上にぼーっとしていた。
机に肘をついて手の平に顔を載せて、ぼーっと。
「…どうしたの? 間抜けな顔して」
白が向かい側に座って本を開く。狭い木造の小屋の中に二人きり。この小屋が何処にあって何時ここに来たのかも知れないが、二人にとってはそんなことはどうでもいいことだった。どちらかと言えばもっと自分の興味を引くことが知りたい、見たいのである。
白の言葉にも黒は生返事をしただけで、ずっと何処か遠くの方を見ていた。
「変な子」
多少汚い言葉を態と選んでみるが、白の思惑に反して黒は間抜け面のままだった。
「うあー」
その上これだ。白は呆れて本を読む気が失せた。閉じて机の上に置く。まあ大して興味がある本では無いので、また今度暇つぶしに読めばいいのである。
それよりも黒のこの状態は何なのか。白はそれが気になって仕方が無かった。
「何なのよ、もう。気が抜けるじゃないの」
呆れるように言うと、黒は眠たくなるほどゆったりと視線を動かして、白を見た。
「今日はねぇ、ぼーっとする日なの」
…理解が難しい。
脳細胞がお手上げ状態だ。
「……何それ」
「今日はー、ぼーっとするの〜」
「はぁ」
目の前で黒が机の上に伸びる。
結果、白は考えない事にした。どうせすることもないし、紅茶でも淹れて黒の言うとおりにぼーっとするのがいいのかもしれない。
白は腿に手を置いて、適当に窓の外を見る事にした。
窓の外―つまりこの小屋の外には、何時も通りな草原が広がっていた。